外傷性肩関節不安定症

外傷性肩関節不安定症とは

肩関節は人体で最も可動域が広い関節ですが、その反面、不安定になりやすい関節です。肩関節の安定性は、骨の形態や靭帯、関節唇、筋肉などの軟部組織によって支えられていますが、これらの構造に何らかの障害が生じると、肩関節不安定症を引き起こします。

外傷性肩関節不安定症はスポーツや事故などで肩関節が脱臼や亜脱臼を起こしたことで、肩関節が不安定な状態となり、脱臼(亜脱臼)が繰り返し起きやすくなってしまいます。

主な症状

●"肩が外れそう"な感覚、痛み

●繰り返す肩の脱臼

原因

外傷による肩関節の脱臼は、ラグビー、アメフト、バスケットボール、サッカー、柔道などのコンタクトスポーツに多く、前下方脱臼がほとんどです。肩関節は一度脱臼を起こすと、その後は脱臼しやすくなり、前下方脱臼では、外転・外旋位を強制されることによって起こります。

治療方針

反復性脱臼へと進展し、頻回の脱臼歴がある場合は、年齢、日常生活状況、症状、職業、スポーツなどを考慮して手術療法を検討します。
当院では鏡視下バンカート修復術を行っております。手術後の再脱臼のリスクを減らす目的で、バンカート法に加え補強処置をおこなう場合があります。

鏡視下バンカート修復術

肩関節内の損傷した部分（バンカート病変）を内視鏡を用いて修復します。関節の縁の骨に糸の付いたアンカーを数個打ちこんで、損傷した関節唇・緩んだ靭帯を修復します。
骨欠損例には腱板疎部・リンプリセージなどの補強処置や、重度な患者さんには腸骨移植を施行し関節窩の安定性を改善します。

術式の選択や補強処置について

相手との接触機会が多いスポーツ（ラグビー、アメリカンフットボール、サッカー、バスケットボールなど）に関わる患者さんの場合は、タックルやトライなどスポーツ活動中の再脱臼の可能性が高いため、補強処置を行います。
また、オーバーヘッドスポーツ（野球・ソフトボールなどのボールを投げるスポーツ、テニスやバドミントンなどのラケットを振るスポーツ）の患者さんの場合には、投球やスイングの妨げにならないように可動域を確認しながらバンカート修復術のみを行います。このように患者さんのスポーツ内容によって、一人一人に最適な術式を選択して行っております。

術後リハビリテーション

手術はあくまで治療のスタートであり、リハビリテーションで機能を回復させる必要があります。術式や患者さんのニーズ、患部の状態によって期間は異なりますが、術後早期からリハビリテーションを開始します。
理学療法士が中心となって、個々の病状に合わせたリハビリメニューを作成いたします。